八王子~中津川間は総延長480Kmのうち205Kmですが、中部山地地帯を貫通しており、前述の通りできるだけ低い地点を通過していることと前掲の設計基準を堅持することによって、いきおい長大トンネル及び群小の中小トンネルを避けることは出来ません。

トンネル1

トンネルは、当初の建設費が高価であり、特に長大トンネルは換気施設を附設しなければならないため、その建設費は幾分高価につきますが、開通後における維持管理が比較的容易なこと、及びこれを避けるため表区の高いところに登り、又は線形を悪くすることによって高速自動車道として、又同時に開発道路としての価値を失うことの損失を考えれば避けないこととしました。
トンネル及び延長は、表-4(1)に示すとおり、1Km以上のもの13本、延長51Kmです。このうち5Km以上の長大トンネルは赤石山系を横断するため2本、長野県内本、木曽山系を横断するため1本計5本で、最長は赤石山系をくぐる「易老渡」トンネル約9Kmです。

この5本の長大トンネルだけは巾9mの単線としました。長大トンネル内交通量はトンネル内速度を60Km/時、車頭間隔60mとすれば、優に20,000台/日、ピーク時2,000台/時の計画交通量とすることができるので、この区間の推定交通量から判断して当分これで充分です。

3Km以上のトンネルには凡て換気施設を附設するものとします。ガソリン車の排気ガス中のCOを換気する必要があるからですが、その限度を0.04%として、送気トンネル、排気堅抗又は送・排気ダクトを用い送・排風機によって必要な送・排気を行うこととしました。
この場合、ディーゼル車の排ガス中にはCOを痕跡程度しか含まないので、表-6に示すようにガソリン車とディーゼル車との割合及び将来のディーゼル車化の傾向を考えるならば、必要送・排風量は相当減少する訳ですが、一応全部ガソリン車とみて2,000台/時のフル・キャパシティに対して計画すれば、一例として最長トンネルについて、表-5のとおりとなります。
この例によってみれば、換気施設はトンネル工事費中34%程度を占め送・排風機電力料金はトンネル収入の6%程度を最高とし、自動車台数の算術級数的減少に対して幾何級数的減少を示すものとなっています。
尚送・排風についてはトンネル内CO自動検知機による送・排風操作、事故発生に対する交通遮断又は救急車派遣、自家発電等を加えて、今後充分に研究しその経済的合理的な附設を計画しなければなりません。

橋梁については、端梁数及び延長は、表-4(2)にしめすとおりです。
中央自動車道と主要接続道路及び主要個所との連絡のため、適当な個所に自動車出入のためのインターチェンジを設けます。現在計画されているのは東京及び神戸を含めて40ヶ所です。
そのほか、その中間の必要個所に外側の緩速車線を走るバス乗降のための停留所及びトラックの小口貨物の簡易積降所を設けます。
ガソリンスタンド、通信施設、自動車修理工場、食堂、休憩又は宿泊所等の付属施設も必要な個所に設けられることはいう迄もありません。
構造物定規図は、図-2のとおりです。

トンネル2

表-4(1) 中央自動車道主要トンネル
(1,000m以上)表

位置及び名称 延長(m)
八王子起点   -
3k970   1,160
6,850 小仏 2,050
75,800 精進 2,080
102,600   1,530
107,800   1,750
113,500   1,500
122,400 青薙山 8,900
132k600 易老渡 9,060
155,800 金森山 5,600
162,200 泰阜 5,100
188,500 恵那山 6,840
243,000   1,150
384,000 千頭嶽 4,900
計51,640

表-4(2) 中央自動車道主要橋梁
(100m以上)表

位置及び名称 延長(m)
八王子起点東京方へ   -
13k180   350
29,500 (高架) 200
八王子起点神戸へ   -
20,900   130
35,300 桂川 150
40,200   300
45,500   350
99,400 富士川 600
107,300 早川 300
131,500 大井川 150
143,100   120
155,000   150
172,100 天龍川 120
206,500 中津川 180
215,100 阿木川 200
280,000   300
283k000 木曽川 600
288,700 長良川 600
293,500 損斐川 500
309,600 今須川 250
334,100 梓川 350
336,400 太上川 400
347,200 愛知川 400
356,100 日野川 200
368,400 横田川 500
381,000 瀬田川 350
396,300 天神川 200
397,000 桂川 600
405,200   300
414,300 芥川 200
439,000 武庫川 200
450,200   120
計9,360

表-5 中央自動車道易老渡(最長)トンネル換気計画概要

案1 排気竪抗を抜く場合
1.計画基準
本トンネル 単線(往復2車線) 断面45.3㎡ 延長9.06Km(9Kmとして計算)
計画交通量 20,000台/day, 2,000台/hr
車輛速度 60Km/hr
車頭間隔 60m
CO発生量 0.06㎥/min
CO恕限度 0.04%
2.換気方針
送気 送気トンネルによるものとし、4.5Kmづつの2送気区間に分け、核両端より送気する。
排気 両端各0.5Km区間及び2.0Km区間4の6排気区間に分け、0.5Km区間は本トンネル上部の排気道、2.0Km区間は本トンネル上部の排気道及び書く区間1本の竪抗により排気する。
3.送気
送気トンネル 断面24.3㎡
1送気区間送気量 22,500㎥/min
最大風速 15.4m/sec
速度風圧 12.0mm W・G
抵抗風圧 95.0mm W・G
送風機 8,000㎥/min 100mm W・G, 300hP=3
送気総馬力 900hP×2
4.排気
竪抗 断面15.06㎡(各延長2.5Km、2.0Km、1.2Km、0.8Km)
排気道 断面6.9㎡
2.0Km区間排気量 10,000㎥/min
最大風速 竪抗11.1m/sec 排気道 12.1m/sec
速度風圧 竪抗7.6mm W・G 排気道8.9mm W・G
抵抗風圧 70.0mm W・G
排風機 2.5Km 竪抗 5,000㎥/min 75mm W・G 150hP=2台
2.0Km 竪抗 5,000㎥/min 70mm W・G 140hP=2台
1.2Km 竪抗 5,000㎥/min 60mm W・G 120hP=2台
0.8Km 竪抗 5,000㎥/min 55mm W・G 110hP=2台
0.5Km 排気区間分 3,000㎥/min 35mm W・G 50hP=4台
廃棄総馬力 1,240hP
5.送排気総馬力
3,050hP
6.経費
総工事費 約70億円(100%)<本トンネル46億円(66%)・送排気24億円(34%)>
案2 排気竪抗を抜かない場合
1.計画基準
本隧道 延長9.06Km
計画交通量 2,000台/hr
車輛速度 60Km/hr
車頭間隔 60m
本隧道内の最大車輛数 300台
CO発生量 11.25㎥CO/min
(12.5㎥)-1Kgのガソリン、ディーゼル油の排ガス量
(0.2L)-毎分の最大消費量
(0.79)-ガソリン、ディーゼル油平均比重
(300台)
(1.9%)-CO含有量
CO恕限度 0.04%
2.送排気
方針 本隧道を中心で区切り2区間の送排区間に分け送排風ダクトにより送・排風する。
1区間の送・排風量 各28.125㎥/min
最大風速 各14m/sec
送・排風ダクト面積 各16.7㎥
送・排風機風圧 各240mm W・G
送・排風気馬力 各1,225hP
総馬力 4,900hP
送・排風機電力料金表
電力料金 案1 案2
所要電力 3,050hP 4,900hP
料金 6,865円/hr 10,145円/hr
  • ※¥3/K・W・Hとする
本隧道収入
(10円)(9Km)(2,000台/hr)=180,000円/hr
  • ※¥10/Kmとする

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台数/hr(台) 収入/hr(円) 電力料金/hr(円) 収入に対する電力料金の割合(%)
2,000 180,000 10,000 5.55
1,750 157,500 7,650 4.80
1,500 135,000 5,625 4.15
1,250 112,500 3,900 3.46
1,000 90,000 2,500 2.77
750 67,500 1,400 2.08
500 45,000 625 1.38

表-6 普通車以上燃料別車輛数(昭28.9.30現在)

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車種別 ガソリン車 ディーゼル車 その他 合計
普通貨物 131,602 15,940 2,250 149,792
貨物牽引車 211 303 30 544
乗合型自動車 13,862 12,357 664 26,883
同情牽引車 12 315 0 327
特種車(病院車、宣伝カー等) 15,780 409 22 16,211
特殊車(ブルトーザー、クレーダー等) 398 712 11 1,121
普通乗用車 68,980 67 641 69,688
合計 230,845 30,103
(11.3%)
3,618 264,566
(100%)
  1. 貨物自動車は大型化、高速度化につれてディーゼル化することが予想され将来においては大部分がディーゼル化するものと考えられる。
  2. 乗合型自動車は現在においても大地しに置けるものは大部分ディーゼル車であるが将来においては100%近くディーゼル化することが予想される。
  3. 特殊車は将来においては大部分がディーゼル化するものと予想される。

図-2 構造物定規図

図-2構造物定規図

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